大相撲九州場所で、白鵬が13日目にして早くも21回目の優勝を飾りました。
ほとんどの人が場所前に白鵬の優勝を予想していたと思いますが、その予想を裏切らないのブッチぎりの優勝。圧倒的な強さと言う外無いでしょう。
これで貴乃花の持つ22回優勝の記録にあと1回となりました。北の湖(24回)や、朝青龍(25回)の記録を破るのも時間の問題でしょう。さらに、千代の富士(31回)、大鵬(32回)の記録を超える日も来るかもしれません。本当に、凄い横綱です。
おそらく、大鵬の記録を破れないケースがあるとしたら、北の湖や貴乃花のように、負傷によって休場が重なり、引退を迫られるような場合だけではないでしょうか。
ただ、現在の体調を考えるとそんなケースもあまり考えられないようにも思えます。
というのも、晩年の北の湖や貴乃花はその体重によって、動きが鈍くなったという点があったように思うのですが、現在の白鵬は理想的な体躯をキープしているからです。
今にして思えば、ちょうど貴乃花の全盛期は、曙や武蔵丸といった大型突進系の力士の全盛期と重なっており、それに対抗するため、無理に体重を増やさざるを得なかったという巡りあわせがあったように思います。それを考えると、貴乃花は、時代が悪かったのではないかと僕は思っています。
さて、白鵬ですが、その強さに関して、昨年、NHKで白鵬を科学的に分析する番組がありました。
それによると、彼の反射神経は、あのオリンピック100m走優勝者のウサイン・ボルトと遜色ないという驚異的な記録をだしていました。また、白鵬は一つ一つの動きを始める瞬間、他の力士は、反動をつけるモーションをつけないと動けないのに対して、そういったモーションをほとんどつけなくても、次の動作に入れる運動神経を持っているというような実験もなされていました。
おそらく、そのあたりが、立会いの踏み込みの良さ、巻き替えの速さといった具体的な動きとなって相撲に生きているのでしょう。
本当に、彼の天才は、ミクロの身体能力によって支えられているのです。
今日の相撲もそうでした。一時は琴欧洲が得意の右四つになったのですが、一瞬攻めあぐねている隙に、もろ差しの体勢に持ち込み、次の瞬間、頭を琴欧洲の脇の下に入れて、まるで俵返しのような下手投げで、大きな大関を転がしてしまいました。こんな芸当が出来るのも、白鵬だけではないでしょうか。
これは僕のイメージなのですが、白鵬は、相手と組んだり、突き合っている時に、相手の身体のバランスの弱点を察知し、そこを一気に攻める、そんな芸当を0コンマ何秒かで自然にやってしまっているのではないでしょうか。
例えば、七日目の豊ノ島戦だったと思うのですが、あの重心の低い豊ノ島を一発の突きで、土俵の外に出してしまいました。それは、無理矢理に力で相手を突いたというのではなく、素人の僕には、自然の摂理に従って、相手の最弱点を見切り、ソコをちょっと押したという気孔のようにも見えました。
そういえば、以前、白鵬は、アナウンサー氏の「どのような相撲をとりたいか」というインタビューに答えて、「勝たないような相撲」と答えていました。アナウンサー氏は、聞き間違えた、あるいはネイティブではない白鵬が日本語を間違えたのかと勘違いしたのか、怪訝な顔をしていましたが、まさにそれは白鵬の相撲感を正しく表現している言葉だったのだと僕は思っています。
つまり、それは無理矢理、相手をねじ伏せて勝とうとするのではなく、相手がいつの間にか負けるように持って行く相撲をとりたい、という意味だったのではなかったでしょうか。
さて、そんな白鵬ですが、今後、誰が彼に対抗するような力士になっていくのでしょうか。現時点では全くわかりません。
個人的には、白鵬とは対極の体格と力で相手をつぶすような相撲をとる把瑠都に期待をしたいのですが、どうも、いい時と悪い時の差があっていけません。
今場所も、阿覧戦、鶴竜戦で豪快な吊りや、琴奨菊戦や稀勢の里戦で力にまかせた寄りを見せた一方で、昨日の日馬富士戦では、何も出来ずに土俵を割ってしまっていました。
また、現時点で白鵬が最も苦手としている稀勢の里はどうでしょうか。
今場所は、大関捕りがかかっているためでしょうか、前半の安定した取り口が、中日の琴欧洲戦あたりからガタガタに崩れてしまいました。まだまだ精神面に課題があるのでしょうか。残念ながら、今場所は11勝しても大関は難しいかもしれません。最低10勝を残して、来場所に期待したいと思います。
さらに、数年先になるかもしれませんが、現在、平幕の栃の若や妙義龍といった新興勢力に期待するしかないのかもしれません。
まぁ勝手なことを書かせていただきました。
月並みな言い方になりますが、先ほど書いたことを繰り返させていただきます。現時点では、白鵬の最大の敵は体調ということになると思います。
ようするに、それほど凄い横綱だということですね。
最後に、白鵬の家紋についての話です。
彼は優勝パレードの時に着る紋付には必ず丸に三つ鱗の家紋(左図)をつけています。
そして、この三つ鱗紋は、鎌倉幕府執権の北条家の家紋として知られています。実際は、北条家の紋は、丸は無く、若干ひしゃげた北条鱗という紋(右図)ですが、それでも白鵬と同系統の紋であることには変りありません。
僕は以前より、白鵬がこの三つ鱗紋を付けていることに謎を見ていました。
ご存知の通り、北条家というのは、元寇を追い払った武家の紋、つまりモンゴル民族にとっては宿敵の紋だからです。
そして、一般的には、外国人力士は親方の紋を付けるのが通例のようです。例えば、把瑠都は三保ヶ関親方(元大関・増位山)の丸に違い丁子紋、日馬富士は伊勢ヶ濱親方(元横綱・旭富士)の丸に抱き茗荷紋、琴欧洲は先代・佐渡ケ獄親方の琴桜の丸に蔦紋というようにです。また、ちなみに、白鵬の親方の宮城野親方(竹葉山)、宮城野部屋創設者の吉葉山はともに、丸に三つ柏紋です。
ということは、白鵬が三つ鱗紋を付けているというのはある「意図」に基づいていると考えるべきだと思ったのです。そして、私には、その「意図」が、非常に気になったというわけです。
実は、それに関して、以前、大相撲協会に問い合わせてみたのですが、全くラチがあきませんでした。また、機会を見て確認してみたいと思います。
まさむね
2011年九州場所関連エントリー
2011.11.29:稀勢の里昇進問題、あるいは合理主義とノスタルジーの葛藤
2011.11.22:期待の大相撲・阪神四天王(豪栄道、栃の若、妙義龍、勢)
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