「その男凶暴につき」は「寅さん」の陰画だったのか

1980年代最後に登場した画期的な映画、それが北野武の「その男凶暴につき」であった。
映画の歴史は、作品と制度との戦いの歴史でもある。
いい映画は、どれも”映画という制度”と戦っている。その意味で、この「その男凶暴につき」はいい映画だったと思う。

この映画が戦っていたのは、それまでの映画の中の暴力という制度である。
現実世界での暴力は常に唐突だ。しかし、この映画までの映画の中の暴力は、まるでプロレスの技のような「芸」に過ぎなかった。

この映画で、ヤクザの流れ弾に当たって死んだ女子高校生、この瞬間、映画は進化したのだと、僕はこの映画を観たときに思ったものだ。
しかし、この唐突の暴力は北野武の「芸」だったということを後で知った。
やはり彼は天才だ。

この映画のラスト近くのシーンで、アズマは気の狂った妹(川上麻衣子)を銃殺した。凄いシーンだった。
映画における兄と妹、僕はそのシーンで「寅さん」を思い出した。
「その男凶暴につき」は「寅さん」の陰画だというのがそのときの直感である...が、おそらく、それは正しくなかった。

僕の直感は大抵が間違える。
そして、この映画はその間違いの一つと一緒に僕の心の中に残った。

まさむね

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