師走の金曜日、深夜0時過ぎの山手線外回りは修羅場だ

師走の金曜日、24:00過ぎの山手線外回りの恵比寿~高田馬場。
現代の日本にまだ修羅場という言葉が残っているとすれば、恐らく、多くの人がこの電車内を思い浮かべるだろう。
僕も、毎年、この時期になると身が引き締まる思いがする。
女性専用車両というのがあるのだから、仕事帰り車専用車両というのもあってもいいという夢想をする。
特に忘年会帰りの会社員は普段の抑圧のせいか、特に気が大きくなって、文字通り傍若無人と化す場合も多い。
困ったものだ。となると必然、意味不明の車中喧嘩が始まる。以下は、かなり前にあった本当の話である。

山手線をご存じない方のために簡単に説明すると、山手線外回りの恵比寿~高田馬場は、恵比寿-渋谷-原宿-代々木-新宿-新大久保-高田馬場 と駅が並んでいるが、渋谷、新宿といったメジャーな駅で降りようとする人はまず降りれないということはないのだが、代々木や新大久保といったマイナーな駅では降りようとする一人二人と、乗り続けようとする大多数の間でたまにモメ事が生じることがあるのである。

あの日も、定員をはるかにオーバーした乗客達を乗せた山手線が原宿駅を過ぎて、代々木駅に到着した。
夜の24:00過ぎ。誰も、代々木駅なんかで降りないだろうと、ドアが開いても動こうとしない。ていうか動けない。一度、車外に出たら、2度と戻れないかもしれないからだ。終電も近い。ここで代々木駅などで残されたら、下手すればラブホ一人泊まりの可能性すらある。

その時、車内のかなり奥のほうから、サラリーマンらしき男性の声がした。
「降ろしてください。降りたいんです。降ろしてください。」
かわいそうだが、無理だ。もう電車が発車する。同乗していた誰もがそう思う。
そして、無常にもその男性は降りることが出来ず、ドアが閉まり、電車は、発車してしまった。
まぁ、仕方が無いな。誰が悪いわけじゃない。おそらくみんなそう感じていた。
新宿で降りて、代々木まで戻ってもらうしかない...

しかし、その男性はよほど、悔しかったのか、目の前の若い学生風のあんちゃんを攻め始めたのだ。
「なんで、邪魔するんですかッ。僕は降りたかったんですよッ。」
かなりの大声だ。しかし、丁寧語だ。男性はサラリーマンを捨てきれないが、しかし相当立腹状態である。

「るせぇな、おやじ」
最初、無視していた学生だが、一言、そうつぶやいた。

「うるさいとは何ですかッ。それに僕はおやじじゃない。あなたは僕を下ろさない権利はあるんですかッ。」
丁寧語はさらにトーンを上げて、学生を責める。おそらく、もう引くに引けなくなったのだろう。

火事と喧嘩は江戸の華と、昔から言われているが、こういう伝統は、いつまでも残るものだ。当然、周りの乗客はその二人のやり取りに興味津々、誰もがその行方を気にしている。勿論、僕もそうだった。

「るせえよ。俺はなんもしてねぇよ。バカじゃないの」
学生も闘争心に火がついたのか、声を荒げて応酬をはじめた。

「バカとは何ですかッ。あなたこそ、バカです。なんで僕を外に出してくれなかったんですかッ。」
僕は丁寧語で喧嘩をする人を始めて見た。しかもこんな300%乗車率の車内で。

そして学生はついに爆発した。「ゴッツ」と鈍い音がする。
サラリーマンの金的に膝蹴りを入れて叫んだのだ。
「知らねぇよ!!表にでろ!!!」

急所を蹴られたサラリーマンが苦しそうな声で最後の声を振り絞った。
「表にでろって、あなたが、僕を表に出さないから、僕は怒ってるんですよッ。」
この期に及んで、まだ丁寧語だ。しかし理屈が通ってる。

その時、ちょうど、山手線は新宿駅に到着。
怒涛のような降車客達がそのサラリーマンと学生をホームに押し流した。
そして、電車は何事もなかったかのように新大久保駅に向った。

まさむね

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