ビートルズのリマスターCDが発売されて、はやくも5日が経過した。
僕は以前リマスターCD発売時に再確認させられる自分のオタク性というエントリーで、このリマスターCDは購入しないと宣言してしまったが、今、後悔している。
ただ、宣言は宣言、まだ購入していない。
尤も、会社の後輩にはしきりに布教し、若干ながら売上げには貢献はしていると思うが、宣教師として失格だろう。
しかし、まだ考え中である。
それにさらに加えるならば、先週金曜日の『タモリ倶楽部』やNHKのビートルズ特集も見逃している。試聴会も行き逃している。何をしているのか。情けない。
さて、そんな中、今回のリマスターCD発売を機に、それをネタにして関係のないことを語るような文章にはたまには出会う。
例えば、これは東京新聞の9月11日のコラムである。
三十年あまり前の中学生の頃、生まれて初めて買ったレコードは、ビートルズのデビューアルバム「プリーズ・プリーズ・ミー」だった
★レコード盤に針を落すと、エネルギーの塊のように押し寄せる歌と演奏に圧倒され、一瞬で魅了された。解散から四十年近くたっても人気が衰えないビートルズ。そのアルバム十四作品を最新技術で高音質化したCDがきのう、世界同時発売された
★深夜、並んで購入して聞いてみた。従来のCDと比べると、ギターやベースの音はクリアで雑音も除かれている。五十年近く前の録音とは思えない。ただ、レコードより断然に音質がいいとまでは思えなかった。販売戦略に乗せられたかな、と少々反省した
★「プリーズ・プリーズ・ミー」(どうか私を満足させて)という社民党の思いはどこまで通じたのか。「沖縄県民の負担軽減の観点から、日米地位協定の改定を提起」との文言が合意文書に盛り込まれ、民主、社民、国民新の三党は連立政権の樹立で合意した
★民主党の鳩山由紀夫代表は十六日の特別国会で第九十三代の首相に選出され、ただちに組閣に着手するが、自民党は首相指名で若林正俊両院議員総会長の名を書くという
★総裁候補でもない参院議員の名しか書けない政党が今後、二大政党の一翼を担えるのか。「レット・イット・ビー」(なるがままに)では困る。
僕はパッと読んで、ある種の怪しさを感じたのである。これは本当の話だろうかという疑いだ。
例えば、今から三十年前といえば、1979年である。その頃の中学生の少年が「Please Please Me(ステレオ!これがビートルズVOL.1)」を始めてのレコードとして購入するだろうか。当時、すでにビートルズは10年近くも前に解散しており、洋楽シーン的には、QUEEN、Eagles、Billy Joel、Rod Stewartなどの時代だ。
初めてのレコード購入がビートルズというのは、勿論、無い話ではない思うが、微妙にウソっぽさを禁じえない。しかも「Please Please Me」というのはどうだろう。おそらく初心者であれば、「Let It Be」「Abbey Road」「S.G.T」といった定番、あるいは人気盤を買い、そこからレコードを揃えていくというのが普通の通り道ではなかっただろうか。
さらに、このコラム氏、夜中の0時に、(おそらく都内の有名)CDショップで並んで購入したという。
終電も近いだろうに...
マニアだったら、おそらく予約をしただろうに...
これも限りなく怪しい逸話であるが、まぁウソだと断定するほどのことはないかもしれない。
そして、嫌味が出てくるのはこのコラムの後半部分だ。社民党が連立の条件として提出した日米地位協定の改定提起を、衆議院で大勢力となった民主党に懇願している(という)姿勢を「プリーズ・プリーズ・ミー」(どうか私を満足させて)と掛けているのだ。
さらに極めつめは、いつもの自民党批判のオチである。これからの自民党の姿勢を「レット・イット・ビー」(なるがままに)では困るとまとめているのだ。
あくまで想像だが、このコラム氏、いつもの”政治的な皮肉”を展開するために、ビートルズを利用しているだけではないのか。
本当に好きだったら、多分、一曲でもいい、感動した「音」を発見して、より具体的に話を持っていくはずだと思う。リマスターCDを聴いた感想が、「レコードより断然に音質がいいとまでは思えなかった。」というのではあまりにも寂しいではないか。このコラム氏にとって音楽とは、一体、何なのだろうという疑問すら湧き出てしまうのであった。
そして、話は何の脈略もなく、政治の話に移ってしまう。
社民党の民主党への態度を「プリーズ・プリーズ・ミー」にひっかけ、さらに、自民党の状況を「レット・イット・ビー」にひっかけようという陳腐な「狙い」があまりにも露骨ではないのか。
おそらく、この人、本当はビートルズのことは、あるいは音楽というもの自体、それほど好きではないのではないだろうか...
いや、これは僕のあくまでも想像ではあるが。
確かに、今も昔も、ビートルズを利用して自分の意見(思想)を語る輩は多い。
例えば「世界の果てまでも」(羽切美代子)というビートルズ訳詞集では、ビートルズの「Revolution」を「前進するならば方法はただひとつ、それは革命だけさ」という本当の歌詞の内容とは全く関係ない内容で紹介している。ジョンはこの曲でむしろ、革命の怪しさを歌っているのにだ。
また、あの片岡義男でさえ、「Revolution」の一節”You say you’ll change the constitution”を、「憲法を改正するとあなたはいう」と訳して、ビートルズを憲法改正反対の主張に利用しようとしていたのである。なんでジョンレノンが憲法改正反対って言わなければならないのだ。
まさむね
(しかし、他人ばかりを批判しているわけにもいかない、他の人から見れば、自分もそう見えているかもしれないからだ。
恥ずかしいことになっていないか、自分のエントリーを今度、ゆっくりと読み返してみたいと思う。)